『東京11R 第~回 東京優駿 GⅠ 3歳 オープン(国際)牡・牝(指定) コース 2400m(芝 左)』
いきなりなんだ?て感じですが、これ、いわゆる日本ダービーのレース条件の説明ですね。
JRAのホームぺージに掲載されている出馬表や新聞など表記に多少の違いはあれど同じ内容の記載がされていると思います。
このレース条件の説明、実は馬券を購入する上で大切な情報がたくさん詰まってたりします。
ここでは、このレース条件に関して主だった要素を取り上げて説明を行います。
レースのクラス(格付け)
中央競馬(JRA)のレースは、平地競走(レース)と障害競走(レース)の2つのレース体系があります。
平地競走は、障害競走以外のレース全般を指し、芝とダート(砂)の障害物がない状態のコースを使って行われるレースを指します。
よく耳にする日本ダービーや、有馬記念といったレースもこの平地競走に含まれます。
そして、この平地競走は、9つにクラス分けされています。
障害競走は、コース上に、ハードルのような障害物である竹柵(ちくさく)、生籬(いけがき)や、その障害物とセットで水たまりを作った水濠(すいごう)、上り坂下り坂を組み合わせたバンケット(自動車教習所で坂道発進の練習のときに使う小さな丘のようなやつです)などの障害をクリアしながら争うレースとなります。
障害競走は、5つにクラス分けされています。
平地競走のクラス
平地競走には、下の図の通り9つにクラス分けされています。
各競走馬は、新馬・未勝利戦からスタート、基本的に勝ち上がることで上のクラスへ挑戦できるようになり、頂点のGⅠ勝利を目指します。
新馬(戦)
メイクデビューとも言われているレースで、文字通り競走馬として初出走する若駒で競われるレースです。
新馬戦は、各競走馬にとって1度だけ出られるレースであり、勝てば上位クラスのレースへ、負ければ未勝利戦へまわることになります。
尚、新馬戦で勝つことを新馬勝ちといい、競走馬としての一つのステータスとなっています。
新馬戦は、2歳の夏(日本ダービーの翌週、通常6月)から開始され、翌年の2月頃まで開催されています。2歳夏から年末までは、2歳新馬戦、年明けからは3歳新馬戦となります。
尚、この期間にデビューできなかった場合、初戦から未勝利戦へまわることになります。
この場合、新馬戦では全頭初出走という観点で条件同じですが、未勝利戦が初出走の場合、すでに1戦以上のキャリアを積んだ競走馬との争い、つまり、ある程度、場慣れした相手との競争となるため分が悪いイメージがあります。(もともと、成長が遅いという面も影響していると思いますが。)
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
未勝利
未勝利戦は、新馬戦で勝てなかった競走馬と、新馬戦の期間にデビューできなかった競走馬が出走するレースとなります。
未勝利戦は、新馬戦が開始されてから1カ月後の7月あたりから始まり、翌年の8月まで開催されます。
7月から年末までの未勝利戦を2歳未勝利戦、年明けからは3歳未勝利戦となります。
尚、7月、8月は2歳未勝利戦と3歳未勝利戦の2世代分の未勝利戦が開催されています。
尚、この期間に未勝利戦を突破できなかった競走馬は、JRAの登録を抹消されることになります。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
1勝クラス
条件レース(条件戦)と言われるレースの1つとなります。
新馬、未勝利を勝ち上がってきた馬(1勝している馬)同士で行われるレースです。
年間通じて開催されており2歳馬限定、3歳馬限定のレースも開催されています。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
2勝クラス
条件レース(条件戦)と言われるレースの1つとなります。
1勝クラスを勝ち上がってきた馬同士で行われるレースです。
年間を通じて行われており、古馬混合性となります。(2歳馬限定、3歳馬限定戦は無い)
一部、強さに応じて背負う斤量を変えるハンデ戦も組まれています。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
3勝クラス
条件レース(条件戦)と言われるレースの1つとなります。
2勝クラスを勝ち上がってきた馬同士で行われるレースです。
年間を通じて行われており、古馬混合性となります。(2歳馬限定、3歳馬限定戦は無い)
一部、強さに応じて背負う斤量を変えるハンデ戦も組まれています。
オープンレースや重賞レースに出走することも可能な馬が残ってきます。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
オープン特別
全ての馬が出走できるレースをオープン競走といいます。
出走馬は、実質、条件戦(3勝クラスなど)を勝ち上がった馬で行われます。
下位条件(1勝クラスなど)の馬が出走する場合、格上挑戦といいます。
レースによっては、格上挑戦ができない条件を設けているケースもあります。
年間通じて開催されており2歳馬限定、3歳馬限定のレースも開催されます。
一部、強さに応じて背負う斤量を変えるハンデ戦も組まれています。
上位の重賞レース勝ちを狙える実力馬が揃ってきます。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
リステッド
オープン特別競走の中でも、レース体系上、重賞レースに次ぐ重要度を持つレースを指します。
基本的な条件などは、オープン競走と同じとなります。
重賞に次ぐ重要度となっているように、上位の重賞レース勝ちを狙うステップレースとして位置づけられているレースも多く、ハイレベルな争いが行われます。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
GⅢ(重賞)
重賞レースといわれる、最も重要なレースの1つとなります。
重賞レースの中では、クラスが一番下でレース数が一番多く設定されています。
有力馬が休養に充てる夏競馬の時期や、GⅠが開催されない競馬場でも多数のレース開催されています。
重賞の中では一番下のクラスも、オープン特別と比べて賞金額は大きくアップしています。
一部、強さに応じて背負う斤量を変えるハンデ戦も組まれています。
GⅠレースのステップレースとして、上位入線馬にGⅠへの優先出走権が付与されるレースも存在します。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
GⅡ(重賞)
重賞レースといわれる、最も重要なレースの1つとなります。
重賞レースの中では、クラスは真ん中で、レース数はGⅠよりやや多く設定されています。
GⅠ勝ち馬などの実力上位馬が、GⅠの前哨戦(慣らし)として出てくるケースも多数あります。
このことからGⅠなみのメンバが揃うレースも発生したりします。
なお、GⅢにGⅠ勝ち馬などの実力馬が出る場合、ハンデ戦でなくとも背負う斤量(負担重量)がかなり重くなってしまうため、あまり出走してくることは無いです。
一部、強さに応じて背負う斤量を変えるハンデ戦も組まれています。
ハンデ戦や一部GⅠの叩きとして最適な時期に開催されないレースなどは、GⅢと同等のメンバになることもあります。
GⅠレースのステップレースとして、上位入線馬にGⅠへの優先出走権が付与されるレースも存在します。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
GⅠ(重賞)
重賞レースといわれる、最も重要なレースの1つとなります。
全レースの中で最高クラスで、2023年現在、年間24レースが設定されています。
1着賞金は億を超える額となり、他のクラスと一線を画すレース群となります。
すでにGⅠを勝っている馬、各ステップレースを勝ち上がってきた馬たちのレースとなるため、実力を持つ馬たちで行われるレースとなります。
GⅠにはハンデ戦は設定させていません。
【オッズ傾向】
過去3年:2020年1月~2023年9月
参考:過去3年のオッズ傾向からみる各クラスの特徴
単勝オッズ(勝ち馬)、馬連オッズ(2着まで)、3連複(3着まで)の観点で、各クラスのオッズ傾向を比較してみました。
横軸に、オッズの中央値をとり、右に行くほどオッズが高くなる(荒れている傾向)ことを示しています。
縦軸には、標準偏差を取り、この数値が大きいほど、結果の振れ幅が広い(堅く収まったり、荒れたりしてばらつきが大きい)、すなわち読みづらい傾向にあるかと考えています。
単勝、馬連、3連複のいずれの観点からも、
・未勝利戦が相対的に堅く収まっている
・GⅢと3勝クラスが荒れ気味かつ読みづらい
傾向にあるように見えます。
GⅠは、単勝、馬連の観点では、相対的に堅く収まっている傾向に見えますが、3連複になるとやや荒れ気味かつ読みづらくなっているので、3着に人気薄が突っ込んでくる傾向にあるのかと推測しました。
【単勝オッズ(勝ち馬)の観点での比較】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【馬連オッズ(2着まで)の観点での比較】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【3連複オッズ(3着まで)の観点での比較】
過去3年:2020年1月~2023年9月
障害競走のクラス
障害競走は、平地競走と比べて、クラスが少なく以下の5つのクラスがあります。
障害競走では、新馬戦は無く、全て未勝利戦からスタートします。
障害競走は、未勝利戦こそ3,000m以下の距離で行われますが、それ以外は、基本的に3,000m以上の距離を障害物を越えながら競走を行うという人馬ともにハードな内容となっています。
未勝利戦
平地競走からの転向含めて、障害競走で未勝利に馬たちで行われるレースです。
距離は、2,700m~3,000mと障害競走の中では、全体的に短めの距離設定となっています。
オープン特別
未勝利戦を勝利した馬は、オープン馬となり、基本的に重賞含めて出走可能となります。
オープン特別は、、未勝利戦同様に3,000m未満の距離設定もありますが、3,000mを超えるレースも設定されてきます。
JGⅢ
重賞レースといわれる、最も重要なレースの1つとなります。
重賞レースの中では、クラスが一番下で、レース数が一番多く年間5レース設定されています。
平地競走と違い、GⅠ勝ち馬などの実力馬も出走してくることがあります。
JGⅡ
重賞レースといわれる、最も重要なレースの1つとなります。
重賞レースの中では、クラスは真ん中で、年間3レースが組まれています。
GⅢ同様にGⅠ勝ち馬など実力馬が多数参戦してきます。
JGⅠ
障害競走で最高峰のレースであり、年に2回中山競馬場で開催されます。
どちらも4,000mを超える距離で争われる過酷なレースとなります。
※平地競走を対象としているため情報量が少なくて申し訳ありません。
斤量(負担重量)
斤量とは、騎手の体重および鞍などの馬具一式の重量のことで、レース毎にどの程度の斤量を各出走馬が背負うのかが定められています。
この負担重量、一説には、1Kg違えば1馬身(0.2秒)の差がつくという話もあります。
よって、当然といえば当然ですが斤量の観点では軽量のほうが有利になります。
ただ実際には、各馬の実力やレース環境など勝敗に影響する要因は無数にあり、斤量だけで判断することはできないことは念頭いおいてください。
そして、この斤量の決め方として馬齢重量、別定重量、定量、ハンデキャップの4種類があります。
馬齢重量
2歳馬限定戦、3歳馬限定戦の同一年齢の出走馬だけで開催されるレースに適用される負担重量の決め方となります。
基本的に、性別で負担重量が決まります。
別定重量
基本となる重量に、獲得賞金や勝利数に応じて負担重量を増減させる方式です。
基本となる重量は、2歳馬限定、3歳馬限定のレースでは馬齢重量となり、古馬混合戦では、5歳以上の牡馬・セン馬における平地競走58Kg、障害競走60Kgの斤量を基準として、4歳以下は年齢と時期に応じて減量される形になっています。牝馬は、牡馬・セン馬の負担重量より2kg軽減されます。
尚、個別の基本となる重量を設定しているレースも存在します。
要は、年齢と性別で決められた基本重量に、獲得賞金や勝利数が高いほど負担重量が増えるという形になります。
【基本重量からの軽減される重量】
()内はオープンクラス以外のレースで適用
牝馬は下記表から更に2kg軽減される
定量
別定重量のうち、馬の年齢・性別を基準に負担重量が決まる方式です。
要は、獲得賞金や勝利数に関係なく年齢と性別で一律決定する形になります。
GⅠレースは、全てこの定量か馬齢重量の方式で行われます。
ハンデキャップ
ハンデ戦、ハンデキャップ戦ともいわれるレースとなり、JRAのハンデキャッパー(ハンデキャップ作成委員)によって、そのレースに出走する各馬の実績、状態などを考慮して全馬に勝つチャンスがあるように負担重量を決定していく方式です。
要は、相対的に強い馬ほど、より重い重量を背負うことになります。
尚、ハンデ戦全体でみると軽量ハンデより重量ハンデのほうが好走している結果となっています。
これは、相対的に実力が伴っていない馬が軽ハンデを見込んで参戦してくるが、重いハンデを背負う馬は、相応の実力のある馬であり、この実力差を斤量だけでは埋めきれない結果となっているのかなと推測します。
ただ、やはり接戦になったり、この斤量差が認知バイアスを産むこともありオッズとしては荒れる傾向にあります。
芝・ダート(平地競走のみ)
平地競走には、芝コースとダート(砂)コースで行われるレースがあります。
JRAでは、芝コースのレースとダートコースのレース数は同等に開催されていますが重賞クラスになると芝コースのレースが厚めに編成されています。
例えば、芝コースで行われるGⅠレースは、2023年の現時点で22レースあり、一方のダートコースで行われるGⅠレースは、年間2レースとなっています。
尚、ダートに関しては、地方競馬とセットでレース体系が整備されています。
JRAと地方競馬のダート統一GI(JpnⅠと表記されたりします)は、先に挙げたJRAのGⅠ2レースに加えて12レースあり合計14レースが組まれています。
JRAの競馬場では、ダートコースが芝コースの内側に配置されるレイアウトになっています。
よってダートコースは、芝コースに比べてコーナーの曲がりがきつく、直線が短いレイアウトとなります。
【コースレイアウト例:東京競馬場】
外側の緑のコースが芝コース、内の茶色のコースがダートコース
芝コースのレースとダートコースのレースでは、出走馬に求められる能力が異なってきます。
芝生のグランドを走るのと海辺の砂浜を走るのでは人でもかなり違いを感じますよね。
砂浜を走るには、スピードというより踏ん張れるパワーが必要になりますね。芝生だとパワーよりも瞬発力(バネ)があり伸びのある走りができるほうが早く走れそうなイメージないですか?
競馬も同様に、芝コースでは瞬発力で切れのある走りができる馬が、ダートコースではパワーのある馬が活躍しています。
芝コース
芝コースは、例えるなら舗装された道路であり最高速度で競うスピード勝負の場となります。
実際、走破タイムを見ると競馬場や距離にもよりますがダートコースのレースよりだいたい2秒~5秒ほど速い決着となっています。
芝の痛み
芝コースは、ダートコースと違いレースをこなしていくと芝が剝がれていきコースに痛みが生じてきます。道路の例えを出しましたが、まさに道路が使われていく中で舗装が一部摩耗したり小さな陥没ができたりするのと同じような状態になってきます。
この痛みは、コースの内側に顕著に発生してきます。これは、各馬が最短距離で走破するため内側の進路に集中してくることに起因します。
一般的に、芝の状態が良い時は、内側の好位置を素早くおさえることができ最短距離で走れる馬、すなわち内枠で先行できる馬が有利とされています。
芝の状態が悪くなると、内側で先行するメリットが薄れ、むしろ外側の芝の状態をよいところを通って、最後に伸びてくる馬が有利になると言われています。(外差しが決まるといったりします)
このように芝コースは、芝の状態がレースの流れや勝敗を分ける要素になりうるため、その時々の最短距離かつ芝の状態が一番良いところはどこかを探し、その恩恵をどの馬が一番受けることができそうかを考えることが、かなり大事になります。
芝の種類
芝コースで使われる芝生の種類としては、大きく野芝と洋芝の2種類があります。
洋芝は、冬の寒さに強いことから、札幌競馬場と函館競馬場の北海道にある2つの競馬場で使われています。
その他の競馬場は、野芝といわれる日本に自生している芝が使われます。
尚、野芝のコースでも、冬場に向けて洋芝の種を野芝の上に蒔くことがあります(これをオーバーシードと言います)、しかしこれは部分的な補強や見た目(緑色にする)の面での利用であり性能面では野芝がベースになっていることに変わりはありません。
この野芝と洋芝の違いとして、洋芝のほうが時計がかかる、つまりスピードが出ないと言われています。
これは洋芝のほうが水分含有量が多かったり、根が地中に伸びず上面にとどまりスポンジ層のような路盤を形成するなど野芝との性質の違いが影響していると言われています。
このことから洋芝のレースでは、野芝のレースと比べて、よりパワーやスタミナを要求されると言われています。
ただしこれも一般的な傾向としての話であり、芝の生育具合やコンディション次第で、洋芝でも早い時計が出たり野芝でも時計が掛かったりすることは念頭に置いておく必要があります。
天候の影響
芝コースは、基本的に水分の含有量が上がれば、よりパワーやスタミナを要求される馬場状態になり時計が掛かるようになります。
よって降雨や降雪があった場合、馬場への影響を慎重に見極めて、各馬の適性を意識する必要があります。
また、不良馬場といわれる極端に水分を含んで、馬場に水たまりやぬかるみが出るような状態になると、ぬかるみに足を取られないように走らなければならい特殊な状態になるため一層適性を見極める必要が出てきます。このような重くぬかるんだ馬場を得意とする馬を道悪巧者といったりします。
尚、芝の水分含有量などの状態は、JRAの公式ホームページに掲載されるので参考にするとよいかと思います。ただ、やはり実際の芝の状態は、レースを見て確認するのが一番です。
ダートコース
ダートコースは、舗装されてないオフロードコースのようなもので、足を取られやすい状況でも前に進めるパワーを要求されるコースとなります。また小回りかつ直線が短いコース形状が多いことから先行する馬に有利にはたらく傾向があり、素早く先団に取り付けれるダッシュ力も要求されます。
砂を被ることの影響
ダートコースでは、芝コースと違い、前にいる馬が蹴り上げる砂をもろに被ることになります。
乾燥した日などは、先団の馬群が蹴り上げる砂が霧のようになり後続の馬からすると視界を遮られるような状態になることもあります。
この状態を嫌って、距離を取ろうとしたり(追走ペースが落ちる)、そもそも走る気を無くす馬も出てきたりします。
よって砂を被ることを嫌う馬は、前に馬を置かないよう先行させたり、外目につけての追走という形をとったりします。
この観点で各馬の気性や枠順・脚質などを把握しておく必要が出てきます。
芝コース発走の外枠有利
ダートコースでは、一部芝コースからのスタートとなるケースがあります。
ダートでは、(特に短距離になればなるほど)先行した馬が有利となります。
この観点で、芝スタートの場合、下記図のように外枠の馬のほうがより長く芝コースを走れることになりスタートでの加速をしやすくなります。
逆に内枠の馬は、スタートダッシュを決めないと、外枠で加速した馬にかぶせられ内に閉じ込められる可能性が高まります。(砂を被ったり、後方からのレースを強いられる)
このような観点で外枠有利と言われることがあります。
この話も一般論であり実際のレースでは、内枠で勝つ馬も当然出てきます。
天候の影響
ダートコースと芝コースの違いに、降雨や降雪時の馬場の時計の出方の違いがあります。
芝コースでは、湿れば湿るほど時計が掛かるようになると説明しましたが、ダートコースでは、適度に湿った馬場になると早い時計が出るようになります。
パサパサに乾いた砂浜を歩くと足を取られますが、波打際の湿った砂浜は地面を踏みしめれるので歩きやすいという経験されたことがあるかと思いますが、同じ原理です。
芝では良馬場でレコードタイムが出ますが、ダートでは稍重で出ます。稍重に近い重馬場も同様と考えてよいかと思います。
この馬場では、ダートのパワー勝負という基本は変わらないですが、より芝コース的なスピードを求められるようになります。この点、出走馬の適性を見極める必要が出てきます。
なおダートコースにおいても不良馬場に近い重馬場や不良馬場のように極端に水分を含んだ馬場になると、ぬかるみとなり足をとられるようになるので時計が掛かるようになります。こうなると芝コース同様特殊な状態になるため、一層の適性の見極めが必要となります。
尚、冬場は雨量が少ないことや水分を含んだ馬場にすると凍結するおそれがあるため、水分をできるだけ含まない乾燥した状態にしています。また、気温によっては凍結防止剤を散布することがあり、この乾燥した状態と凍結防止剤の散布はどちらも時計が掛かる要因となります。
(凍結防止剤を散布すると若干ですが砂に粘り気が出るそうです)
尚、芝コース同様、ダートの水分含有量や凍結防止剤を散布したかどうかは、JRAの公式ホームページに掲載されるので参考にするとよいかと思います。ただ、やはりこちらも芝コースと同様に実際の状態は、レースを見て確認するのが一番です。
距離(平地競走のみ)
陸上競技で100m走、1500m走、マラソンなどの距離が異なる競技があるように、競馬の世界でも異なる距離設定のレースが開催されています。
現在、JRAでは、芝コースで16、ダートコースで13の異なる距離設定のレースが開催されています。
多いですね。具体的には次の表のとおりとなっています。
【JRAで開催されているレースの距離】
これらは、大まかに短距離、中距離、長距離といった区分で語られたりします。
この3つの区分を何mで区切るのか、現在は明確な定義がなさそうですが、かつては、1200m~1600mを短距離、1601~2200mを中距離、2201m以上を長距離とする基準があったようです。(間違っていたらすいません。)今は、1000mのレースもあるので当てはまらないですね。
尚、この距離の区分に関しては、グローバルで事実上の標準としてSMILEと略される次のような基準があり、目にする機会が増えたように感じます。
【SMILEの距離区分】
また陸上競技の例えになりますが、100mで活躍する選手がマラソンで活躍することがない(そもそも出てこない)ように、競馬でも距離ごとに活躍する馬は異なってきます。
短距離になればダッシュ力やスピードが要求され、長距離になればスタミナが要求されるためです。これは競馬も陸上競技も同じことが言えますね。
Sprint:1000m ~ 1300m
超短距離戦といわれたりする1000mや、スプリント戦といわれたりする1200mを含む最も短距離の区分となります。
ここに出走してくる馬には、ダッシュ力、スピードが問われるのは勿論ですがゲートの出のうまさが強く求められます。走る距離が短いのでゲートの出で失敗して出遅れると挽回が難しくなるためです。人気になっている馬が出遅れ癖がある時は要注意です。
レースとしては、終始ハイペースで進みスタートダッシュからスピードで押し切るような形で決着することが多い印象です。
また、この距離では、比較的馬格がよい大型馬(馬体重が重い馬)のほうが活躍する傾向があります。(あくまで傾向です。)
尚、この距離で行われるGⅠは芝1200mのいわゆるスプリント戦の2レースのみとなります。
ダートコースでのGⅠは設定されていません。
【この距離で行われるGⅠレース】
【オッズ傾向:芝コース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【オッズ傾向:ダートコース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
Mile:1301m ~ 1899m
いわゆるマイル戦といわれる1600mを中心に前後約300mを範囲とした区分となります。
1600mまでは、前述のSprintと傾向は似ていますが、レースペースは、ミドルペースで進み最後の直線勝負となることが増えてくる印象です。
尚、1800mの芝コースになるとその傾向がより顕著になり、ミドルからスローペースで進み、最後の直線の瞬発力勝負となることが増えてきます。
その意味で、芝1800mは、次に説明するIntermediateに近いかもしれません。
尚、この距離で行われるGⅠは、芝コースは全て1600mのレースで7レースが組まれており、ダートコースは、1600mと1800mレースが1つずつ組まれています。
尚、ダートコースのGⅠは全てこの距離区分に設定されている形となります。
【この距離で行われるGⅠレース】
【オッズ傾向:芝コース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【オッズ傾向:ダートコース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
Intermediate:1900m ~ 2100m
チャンピオンディスタンスともいわれる2000mを中心に前後100mを範囲とした距離区分となります。
チャンピオンディスタンスといわれる所以は、(特に近年)各国で行われる主要レースでこの距離が採用されていることに由来するようです。
この距離までくるとスピードだけでなくスタミナも要求されるようになり、Sprintで出てくる馬たちはほとんど見かけなくなります。
芝コースでは1800mで述べた傾向と同様にミドルからスローのペースで進み最後の直線での瞬発力勝負になることが多くなります。
またダートコースでは、スピードを持続させるスタミナが求められてきます。(バテないこと)
尚、この距離で行われるGⅠは、芝コースで5レースが設定されており、ダートコースのレースは無しとなります。
【この距離で行われるGⅠレース】
【オッズ傾向:芝コース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【オッズ傾向:ダートコース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
Long:2101m ~ 2700m
クラシックディスタンスといわれる2400mを中心に前後約300mを範囲とした距離区分となります。
クラシックは伝統とか格式が高いといったニュアンスがあるようで、これは各国のダービーを筆頭に古くからの主要レースにこの距離が使われていることに由来するようです。
JRAでも、日本ダービーやジャパンカップなど最高峰のレースがこの2400mの距離で設定されています。
馬券の傾向としては、他の距離区分よりも低いオッズ傾向(相対的に堅い)にあります。
尚、この距離で行われるGⅠは、芝コースで6レースが設定されており、ダートコースのレースは無しとなります。
【この距離で行われるGⅠレース】
【オッズ傾向:芝コース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【オッズ傾向:ダートコース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
Extended:2701m ~
いわゆる長距離といわれる距離となり、JRAではレース数がその他の区分に比べてぐっと少なくなります。
尚、この距離でのダートコースのレースは、未勝利戦・条件戦含めて行われておりません。
過去には、春と秋の天皇賞が両方とも3200mに設定されていたのですが秋開催分が2000mに距離変更となったように、長距離のレースは減る傾向にあります。
この距離になると、長距離を得意とするステイヤーと呼ばれる馬たちが活躍をします。
尚、この距離で行われるGⅠは、芝コースで2レースが設定されており、ダートコースのレースは無しとなります。
【この距離で行われるGⅠレース】
【オッズ傾向:芝コース】
過去3年:2020年1月~2023年9月
参考:過去3年のオッズ傾向からみる距離設定の特徴
レースのクラス(格付け)で説明したのと同じ単勝オッズ(勝ち馬)、馬連オッズ(2着まで)、3連複(3着まで)の観点で、各距離設定のオッズ傾向を比較してみました。
単勝がかなり団子状態なのですが、馬連、3連複を含めてオッズは、
芝コースでは、
Extended > Sprint > Mile > Intermediate > Long
ダートコースでは、
Long > Sprint > Mile > Intermediate
となっているように見え、芝・ダートともに一番長い距離が最もオッズが高く、そこから短距離から中距離へと順に並んでいくという同様の傾向が見て取れます。
もっとも長い距離のオッズが高くなるのは、レース数自体がすくないため高配当がちょっとでも混じるとその影響を受けやすいという面があるかと思います。
芝コースのExtendedに関しては、ダイヤモンドステークスや万葉ステークスなどのハンデ戦が荒れ気味という影響もあるようです。
【単勝オッズ(勝ち馬)の観点での比較】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【馬連オッズ(2着まで)の観点での比較】
過去3年:2020年1月~2023年9月
【3連複オッズ(3着まで)の観点での比較】
過去3年:2020年1月~2023年9月
まとめ
レースの格付け(クラス)
JRAのレースは、平地競走(レース)と障害競走(レース)の2つのレース体系があります。
平地競走は、9つのクラス、障害競走では、5つのクラスに分かれています。
【平地競走のクラス】
【障害競走のクラス】
斤量
芝・ダート
距離
現在、JRAでは、芝コースで16、ダートコースで13の異なる距離設定のレースが開催されています。
距離の区分に関しては、グローバルで事実上の標準としてSMILEと略される基準がある。
ここまでいろいろと傾向情報なども記載してきましたが、これはあくまで一参考情報として使ってください。鵜呑みにしてしまうと、まさにその行為が認知バイアスを生じさせる要因となります。
馬券購入時には、出走馬各馬およびコースの状態をよく吟味してから購入しましょう。
※馬券は20歳になってから。馬券は程よく楽しみましょう。