『夏競馬は荒れる』競馬をある程度やっている人なら一度は聞いたことのあるフレーズではないでしょうか?
尚、夏競馬の対象期間は、一般的に日本ダービー翌週の6月初頭から9月上旬となります。
この夏競馬、2歳馬のデビュー戦が始まったり、古馬混合戦は4歳以上から3歳以上となるなどレーシングプログラムに変化があること、札幌や函館などのこの時期にしか開催されない会場が出てくるなどの変化点が多くあります。
また前半の6月~7月中旬は、梅雨とも重なり馬場状態の変化が激しいという事情もあります。
その他にも変化点を挙げれば、いろいろと出て来て「だから夏競馬は荒れるんだね」となりそうです。
しかしながら本当に夏競馬は荒れているのか?
また仮に荒れているとしてもどの程度荒れているのか?
と聞かれると、少なくとも自分は答えられないです。。。
ということで、気になったら調査ということで夏競馬は本当に荒れているのかを調査してみました。
夏競馬は荒れているのか?
早速ですが、夏競馬は荒れているのか?を明らかにするために、次の方法で調査をしました。
2020年~2023年の4年間の夏競馬(6月~9月上旬)における平場全レース(障害戦除く)と、同じ4年間の秋冬(10月~12月)の平場全レースでオッズ比較を行いました。
尚、オッズは、1着(勝ち馬)の観点で単勝、2着までの観点で馬連、3着までの観点で3連複のオッズで比較してみました。
比較するデータとしては、平均値だけでなく中央値と最大値も見てみました。
結果は次となります。
やはり単勝、馬連、3連複の平均値、中央値全て”夏競馬期間のほうがオッズが高い”となりました。
単勝、馬連、3連複それぞれ夏競馬のほうが秋・冬の時期より10~20%ほど高くなっており、どれかが極端に差があるというものではありませんでした。
尚、最大値は、必ずしも夏競馬期間のほうが高くなっておらず、極端に荒れる(超高配当が出る)ことで夏競馬期間のオッズが高くなっているというのもなさそうです。
ということで、今回の調査で用いたサンプルだけと条件が付きますが、確かに夏競馬は、秋冬の時期と比べると荒れる傾向にあるという結果となりました。
ここからは追加で分析して、どういった要因がありそうかを探ってみたいと思います。
オッズ分析の深堀り
レーシングプログラムが変わる影響
まずは、レーシングプログラムの観点で見てみたいと思います。
冒頭で記載した通り夏競馬から2歳馬戦が始まり、古馬混合戦が4歳以上から3歳以上に変わります。
この点、個人的な予想では夏競馬の2歳馬戦や古馬混合戦は、完全に初物づくしとなるので予想がしづらく、結果的に荒れる傾向にあるのではないかと推測しています。
さてどういった結果になっているでしょうか。
尚、数値データだけだと、ぱっと見分かりづらいところもあったので中央値を横軸に、標準偏差を縦軸としたグラフをあわせて作成してみました。
このグラフの見方は、横軸の中央値が大きいほど(グラフの右に行くほど)、オッズが高くなる、つまり荒れている傾向にあることを示し、縦軸の標準偏差が大きい(グラフの上にいくほど)、1つ1つのデータの振れ幅が大きい、つまり荒れたり、堅かったりの変動が激しいことを示しています。
よってグラフの右に行くほど相対的に荒れている傾向を示し、上に行くほど読みづらい傾向にあることを示します。
尚、平均値ではなく中央値を用いたのは、平均値は極端に大きな(小さな)値に引っ張れてしまう性質があるため中央値を取っています。
【単勝オッズ】
【馬連オッズ】
【3連複オッズ】
単勝、馬連、3連複で傾向は同じで、次を示しています。
- 2歳馬戦:夏競馬のほうが堅く収まる傾向にある
- 3歳馬戦:夏競馬のほうが圧倒的に荒れている傾向にある
- 古馬混合戦(3歳以上):夏競馬のほうが荒れている傾向にある
予想に反して2歳馬戦は、夏競馬のほうが堅くおさまっているという結果となりました。
3歳馬戦や古馬混合戦を含めた全体としても夏の2歳馬戦は最も堅いという結果になりました。
なんでだか理由ははっきりとは分からないですが、小頭数のレースが多く、かつ仕上がりの差(成長の差)が顕著に出て人気通り(前評判通り)に決まるケースが多いのかなと推測しています。
個人的に、この点は認識を改めたいと思いました。
次に3歳馬戦ですが、ここは個人的に盲点でした。
夏競馬の3歳馬戦は、この期間でラストとなる3歳未勝利戦が多数組まれており、最後の勝ち上がりを目指して未勝利の3歳馬がしのぎを削る戦いを繰り広げています。
この時期の未勝利戦は、どんぐりの背比べ状態で、その日の展開や馬のコンディション次第で多くの馬に勝つチャンスがあり、予想が難しく、結果としてオッズが高くなっているのかなと推測しています。
一方、10月~12月の3歳馬限定戦といえば3歳クラシック最後の1冠である菊花賞、秋華賞とそのトライアルレースくらいで実績馬、実力馬が揃うレースのため堅く収まっていると考えられます。
この夏の3歳馬戦が夏競馬のオッズを引き上げている一つの要因として認識できました。
最後に古馬混合戦(3歳以上)ですが、ここは、予想通り夏競馬のほうが相対的に荒れている結果となっています。
この要因は、やはり3歳馬と古馬との初対戦ということで過去のレースでの勝ち負けを参考とすることが難しいことと、もう一つ斤量(負担重量)の観点があるかと思います。
この時期の別定戦では、3歳馬の牡馬・セン馬は古馬に対して3Kgの斤量軽減、牝馬では5Kgの斤量の軽減処置が受けれます。(成長度合いの差を埋めるための処置)
尚、1400m未満の短距離戦に関しては、8月になると牡馬・セン馬で2Kgの軽減、牝馬は4Kg軽減と6月、7月に比べて斤量が1kg増えます。
この斤量の軽減処置、言い換えると別定戦なんだけど世代間ハンデ戦となっている点をどう読むかが難しさに拍車をかけていると考えています。
ここで、あれっ?それって秋冬も同じなんじゃないかと思われた方さすがです。
秋冬の期間、この調査においては10月~12月の期間ですが、ここでも3歳馬には斤量の軽減処置が取られます。
が、しかし軽減される斤量が3歳牡馬・セン馬で1~2Kg、牝馬で3~4Kgと夏の時期より減ってるんですね。
これは3歳馬の成長に合わせて軽減処置を徐々に無くしていくという考え方に基づいています。
過去の対戦成績が分かるようになることと3歳馬と古馬の極端な斤量差がなくなっていくことの両面から秋冬のほうが相対的に予想しやすくなっているのではないかと思います。
尚、斤量に関しては、次の記事の斤量の項目も見ていただければと思います。
会場(競馬場)の影響
こちらも冒頭で触れた通り、夏競馬の期間は、最初の6月こそ、通常、東京と阪神のいわゆる4大競馬場でのレースが組まれていますが、7月、8月は4大競馬場でのレースは組まれていません。
また、函館、札幌というこの夏競馬の期間だけレースが開催される会場も出てきます。
この会場が変わる点がオッズを引き上げる要因になっているのではないか?
ということで会場の観点で夏競馬と秋冬競馬の比較をしてみたいと思います。
予想としては、夏競馬の東京・阪神以外のローカル開催がオッズを押し上げているのかなと考えています。また秋冬競馬は全体的に夏競馬に比べて堅い傾向があるのかなと予想します。
さて結果はどうなっているでしょうか。
【単勝オッズ】
【馬連オッズ】
【3連複オッズ】
こちらも単勝、馬連、3連複で傾向は同じで次を示しています。
- 秋冬競馬は、東京、京都、阪神の堅く収まっているグループと福島、新潟、中山の荒れ気味のグループで大きな乖離ができている
- 夏競馬は、秋冬競馬の堅いグループと荒れ気味のグループの間に分布している
- 夏競馬では、新潟、福島、東京が相対的に荒れ気味になっている
予想と全く違いました。。。
夏競馬では、東京と阪神も相対的に荒れている部類に入っていました。
また、秋冬競馬は全体的に夏競馬と比較して堅い傾向かと思いきや、堅く収まるグループと荒れ気味なグループで大きく割れるという予想外の結果でした。
もう一点、夏競馬が荒れる要因からは脱線してしまいますが、秋冬の中山が4大競馬場の中で唯一荒れ気味のグループに属していることが予想外でした。なんででしょうか・・・
逆に予想通りだったのは秋冬の東京、京都、阪神が堅く収まる傾向にあったという点と、福島、新潟が荒れる傾向にあることです。
尚、福島と新潟は、夏と秋冬の双方で相対的に荒れる傾向を示していました。
と、ここまでである程度、夏と秋冬における各会場の傾向がつかめましたが、もう一歩踏み込んでみようと思います。
何をするのかといえば芝レースとダートレースに分類して傾向を見ようと思います。
芝/ダート別の傾向
芝/ダートで分類した結果が次となります。
【単勝オッズ】
【馬連オッズ】
【3連複】
芝レースは全体傾向とほぼ同等の傾向を示しています。
これに対してダートレースは、馬連オッズ(グラフ参照)に顕著に出ていますが夏競馬のレースが秋冬に比べて大きく荒れる方向に寄っています。
特に東京と中京ですが、芝レースに関しては相対的に堅めなのに対してダートレースは荒れている部類になっていることが分かります。
このダートレースの傾向が夏競馬のオッズを引き上げている一つの要因となっていそうです。
この原因は、おそらく東京は6月、中京は7月に開催であり、ちょうど本州が梅雨に入っている時期が関係しているのではないかと思います。
ダートは、芝に比べて雨の影響で良馬場以外の状態になりやすく、また良馬場に戻りにくいところがあります。(少なくともJRAが発表している馬場コンディションにおいては。)
この点、3歳馬のラスト未勝利戦、古馬混合戦での取捨を含めて予想を難しくしているのではないか思います。
尚、同じ時期に開催される阪神ダートも秋冬に比べて夏のほうがオッズが高くなっていることが分かります。
その他要因の検討
ここまでオッズデータを使って、夏競馬の変化点がオッズに影響を与えているのかという観点で分析をしてみました。
ここからは、データで分析というより一般的に言われていること、自分が感じている難しさという観点で夏競馬が荒れると言われる要因を挙げてみたいと思います。
騎手と調教師
夏競馬期間以外は、東西で4大競馬場(東京、中山、京都、阪神)のいずれかで開催があり、未勝利戦や下級条件戦では、西は栗東所属馬が、東は美浦所属馬が多く出走してきます。
また騎手も、栗東に拠点を置いている騎手は西側の会場で、同様に美浦に拠点を置いている騎手は東側の会場で騎乗するケースが多くあります。
つまり、東西の会場で同じ調教師や騎手でのレースを目にする機会が多くなります。
この点、夏競馬、特に7月以降の4大競馬場での開催がなくなる期間は、未勝利、下級条件戦も調教師や騎手の東西の差がなく出てくるようになります。
皆さん予想する上で、調教師(厩舎)や騎手を予想する要素に入れている方がいるのではないでしょうか。
この点、夏競馬は勝手が違うとなるケースがあるかと思います。
輸送と滞在競馬
夏競馬が行われる会場は、札幌、函館、新潟、福島、小倉など栗東や美浦のトレーニングセンタから遠い会場が多く、輸送距離が長くなったり、札幌、函館では輸送ではなく、現地に長期間滞在するというケースが出てきます。
この普段と違う環境が、馬にはストレスとなり力を発揮できないケースというのも出てくると思います。
この輸送と滞在の差、環境の変化に強い馬、弱い馬といった要素も予想を難しくしているところがあるかと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?
”夏競馬は荒れる”に関して過去4年の夏競馬と秋冬競馬の単勝、馬連、3連複のオッズを比較し、このサンプル期間に関しては夏競馬のほうが秋冬に比べて10~20%程度オッズが高い傾向にあることを確認しました。
夏競馬では、この期間がラストとなる3歳未勝利戦が多く組まれている3歳馬戦や3歳馬が入ってくる古馬混合戦で秋冬に比べてオッズが高い傾向にあることや、東京、阪神、中京などで秋冬に比べてオッズが高い傾向にあり、その要因がダートレースにありそうなことなど見えてきました。
また2歳馬戦は夏のほうが堅い傾向にあったりと発見もありました。
こういった傾向は参考として知っておくとよいかと思いますが、結局、オッズは馬券を購入した人たちの思惑で形成され”荒れる”ということは多くの人が来ると思った人気馬が来ないという事象が起きていると言えます。
読み違いをしているということですね。
夏競馬を攻略するには、必要なデータ収集や当日の馬の様子を見て予想するという基本をしっかりとやっていくことは勿論ですが、不確定要素多数で、まともに予想ができない場合、むやみに手を出さないというのが最大の攻略方法かもしれないなと思いました。
尚、オッズの決まり方に関しては次の記事を参照してみてください。
もちろん多くの人が気づいていない自分だけの攻略法や狙い馬を見つけれれば、稼げるチャンスが多いとも言えるかもしれません。
こういった狙い目を探すことも競馬の楽しみ方の一つかと思っています。
それでは、今年も夏競馬とうまく付き合ってきましょう!
※馬券は20歳になってから。馬券は程よく楽しみましょう。